84回目になりました。
今回は、山形県の上山城(かみのやまじょう)といきましょう。
上山城は、上山盆地中央の上山温泉街を一望する丘陵の上に築かれた平山城です。
小規模な城郭ですが、三重の天守が聳えたその姿は、かつて「羽州の名城」として広く知れわたっていました。
別称は月岡城です。
残念ながら、上山城は日本100名城にも続日本100名城にも選ばれていません。
上山城へは2003年7月20日に登城しました。
*****************************
上山城は、最上氏の最南端の城塞でした。
天文4年(1535)に最上氏一族の武衛義忠(ぶえい よしただ)が天神森の丘陵に築城した月岡城に始まると言われています。
上山は羽州街道と米沢街道の分岐点に近く、山形の最上氏と米沢の伊達氏が、しばしば衝突したところ。
天神森は西に大沼、西南に牛沼、東には前川が流れている自然の要害でした。
元和8年(1622)に松平重忠が4万石で入封し、修築します。
その後寛永5年(1628)に25,000石で土岐頼行(とき よりゆき)が下総(しもうさ)から入国、城を大改修し、近世的城郭として作り変えました。
丘陵上部に本丸と二の丸を配置し、三重の天守と二重の隅櫓、そして大手門を持った平山城を完成させたのですね。
三重の天守が聳えるその威容は、奥羽随一の美しい城と言われていました。
しかし、元禄5年(1692)に土岐氏が越前へ転封されると、城は幕府の命令で天守をはじめ城の建物などが破却され、廃城。
命令の中身、理由はわかっていません。
同年、城のない上山に飛騨高山城主金森頼時(よりとき)が、元禄10年には松平(藤井)信通(のぶみち)が備中庭瀬から3万石で入封します。
松平氏は、幕府の許可を得て上山城の再築城を始め、本丸、大手門などは再建しましたが、天守や櫓は再築しませんでした。
土岐氏時代のような城郭ではなく、質素なものだったようです。
以後、松平氏が約160年間在城して明治を迎えます。
*****************************
松平・土岐氏によって近世城郭として整備された上山城は、本丸の周囲に水濠が巡らされ、二の丸にも水濠を配して自然の地形を巧みに取り入れた輪郭式の縄張りでした。
地形を生かした塁壁に曲線部を多く作っていますよ。
攻めるに難しい城だと思います。
昭和57年に郷土資料館として月岡公園(旧二の丸跡)に建てられた天守は、土岐氏時代の天守とは外観や位置も異なっています。
観光用に築造されたいわゆる模擬天守ですね。
二重の入母屋造の大屋根に一重の望楼を載せ、大きな千鳥破風と望楼部の華灯窓と高欄が古風な感じを与えています。
一重目の板張りの四隅に石落としを付け、それ以外の上部分は白漆喰総塗籠の、三重四階建て望楼型独立式天守です。
内部には上山城の歴史資料などが展示されていますよ。
本丸跡に建築されなかったのは、本丸は現在月岡神社の境内となっていて、かつての櫓台後に忠魂碑が建っているためだと思われます。
古絵図などによると、取り壊された元の天守は、白亜総塗籠の破風などの飾りのない層塔型独立式天守だったようですね。
かつて本丸があり天神森と呼ばれた小高い丘陵の上には、藩祖松平利長・信一を祀る月岡神社が建立されています。
本丸周辺には、土塁と空堀、石垣の一部がわずかに現存し、かつての城跡を偲ばせるだけです。
城地全体が月岡公園として市民の憩いの場となっていますよ。
2003年7月20日から1泊2日で、山形県・秋田県の8城址巡りをしました。
20日は上杉景勝が直江兼続を城代とした、米沢城址をまず探訪。
上杉神社が本丸跡にあり、米沢藩中興の名君上杉鷹山公之像があります。
続いて昭和57年に三重四階の模擬天守が建造された上山城へ。
そして山形城に向かいました。
最後に新庄城です。
最上公園となっている城址には、本丸虎口の枡形と表御門跡に立派な櫓門石垣や、土塁、水濠が残っていました。
翌21日には鯱を飾った立派な大手櫓門のある松峰(山)城址を訪問。
そして、土塁や水濠が遺構として残っており、荘内神社がある鶴ケ岡城址を訪ねました。
続いて秋田県に行って、石垣と立派な櫓門を備えた陣屋風の亀田城(現在は亀田城佐藤八十八美術館)、そしてすぐ隣に観光用に築城された三重三階の天鷺城(観光施設天鷺(あまさぎ)村)に。
亀田城の大手門が復元され、史料館や武家屋敷、農家が移築展示されています。
近くの山頂に天守らしいものが見えていましたので、観光マップで確認すると高城山城址公園・天鷺ワイン城と書かれていました。
この地にはよほど城好きの首長や実業家がいらっしゃるんだろうなあと思った記憶があります。
上山城の公式サイトがありました。載せておきまーす。
*上山城詳細
・営業時間:9:00〜16:45
・休業日:年末(12月29日~31日)
▼PR
【参考文献】
平井 聖監修『1 北海道 東北 吹雪舞うみちのくの堅城』(毎日新聞社 平成9年3月25日発行)、南條範夫監修『日本の城 名城探訪ガイド』(日本通信教育連盟)、西ヶ谷恭弘編『国別 城郭・陣屋・要害・台場事典』(東京堂出版 2002年7月15日初版発行)、全国城郭管理者協議会監修『復元イラストと古地図で見る日本の名城』(碧水社 1995年4月18日発行)他
▼PR