お城とは、軍事的構造物をさします。
つまり、戦のために存在するものですよね。
しかし現代では使用されていないため、城跡巡りをしていても何気なく見ているだけで、アチコチにある仕掛けや意味などを知らずに通り過ぎているという方も多いでしょう。
それは実に勿体ないです。
では、お城にはどんな防衛機能があったでしょうか?
ここではお城の防衛機能について、世界遺産でもある兵庫県は姫路の名物、姫路城で説明します。
*不戦の城・姫路城
姫路城は兵庫県姫路市にあり、世界遺産かつ国宝であり国の特別史跡ですね。
木造建築の最高傑作と言われており、通称は白鷺城です。
ちなみにこの白鷺ですが、呼び方は「はくろ」で、白鷺城(はくろじょう)が正しい読み方。
「しらさぎ」と呼ぶ方も多いのですが、日本の城郭は基本的に音読みとされています。
地元・姫路でもやはり「はくろじょう」と呼ばれていますので、この機会に覚えてくださいね。
この姫路城、防衛構造物であるためにいろんな仕掛けがしてあるのですが、実は一度も外敵と戦になったことはありません。
そのため、「不戦の城」としても有名です。
それはそれで勿体ないような気がしますが…平和なのは良き事かなですね。
では、姫路城の防衛機能を紹介していきます。
*どうやって攻める? 姫路城の防衛機能
広大な敷地内には、さまざまな仕掛けがあります。
かなり細かい仕掛けは省き、説明しやすいものだけをいくつか選んだのが、下の12の仕掛けです。
- 内堀まで大きい
- 大手門が3重構造
- 三国濠のお出迎え
- 「るの門」で袋小路に
- いたるところにある「狭間」から攻撃
- 細い道がぐねぐねと曲がりくねる
- 天井が槍が降る「にの門」
- 狭くて少人数でしか通れない「ほの門」
- 存在に気付きにくい「水一門」
- いきなり下り坂にして迷いを生む「水二門」
- 天守近くで石落としの攻撃
- とどめの「水五門」と「水六門」
では、上げた12の仕掛けを順番に説明していきましょう。
内堀まで大きい
お城には外堀、内堀がありますが、姫路城の内堀は巨大です。
橋を壊されたら、ちょっと渡れなさそうな幅がありますよ。
weblio辞書によると、内堀の長さは約3km、堀幅12m-34m。内堀以内の面積は約23ha(23万平方メートル)となっています。
幅は狭いところでも12mあるのですね。
泳げなくはないですが、季節によれば簡単とは言えない距離でしょう。
姫路城には天守を中心として、内堀、中堀、外堀と3重の堀がありました。
内堀でこれだけ巨大だと、管理するのも攻め入るのも大変です。
大手門が3重構造
攻める側を想像してくださいね。
何とか工夫をしてようやく内堀を渡ったとしましょう。
桜田橋を渡って正面から攻めた場合、そこには頑丈な大手門がそびえています。
現在は1つですが元々は3つも門があり、城内では格調が高く厳重な門だったそうです。
今の「大手門」は1938年(昭和13年)に完成したもので、位置や大きさは江戸時代の姫路城にあったものとは違っています。
三国濠のお出迎え
大手門をくぐって広場を抜け、まずあるのが「菱の門」です。
まっすぐ天守に進みたくても、目の前には三国濠という水溜りがどーんと出てきます。
三国濠を回避するには右回りと左回りがありますが、右手には門らしきものが見えません。
しかし左には「いの門」が見えている状態ですね。
そこで「いの門」に突撃することにしましょう。
すると菱の門をくぐったときには視界に入っていなかった「るの門」から兵が出てきて、背後から攻撃されてしまいます。
あれ? 今、どっから出てきた!??
と驚いている間に、殺されちゃうよ、ってことですね。
「るの門」で袋小路に
三国濠を右手に回ったとすれば、見えてくるのが「るの門」です。
ここはとても狭く小さな場所。
石で囲まれた門に木の扉があったとされ、攻められたときには扉をしめて袋小路とし、一網打尽にしてしまえるようになっています。
いたるところにある「狭間」から攻撃
姫路城に一度でも行ったことがある方ならご存じだと思いますが、城の壁にはあちこちに三角形や四角形の穴があけられています。
これはただのデザインや装飾などではなく、戦闘時にこの穴から攻めてくる兵士を鉄砲や矢で攻撃するためのものですね。
「狭間(さま)」と言います。
三角と四角は鉄砲狭間、縦長は矢狭間です。
ただでさえぐるぐると狭い回廊を走らされているのに、横の壁から矢や鉄砲の玉がびゅんびゅんと飛んでくるわけです。
どこに敵がいても確実に殺せるようと考えだされました。
ちなみに現在は、ここに行けばスマホのアプリで兵士が敵を攻撃する様子の映像が見られますよ。
面白いですし、様子がよくわかっておすすめです。
細い道がぐねぐねと曲がりくねる
大手門をくぐって以来、真っすぐに50メートル歩けたことはないのではないか? と思うほど、細い道がぐねぐねと曲がりくねっています。
これは大勢で攻められず、走る勢いもなくすためですね。
360度回転したかと思ったら右へ左へと足を動かされます。
甲冑のような重いものを着て刀もって走るだけでもしんどいのに、もう勘弁して、といいたくなるような道にしてあります。
角を曲がったら大量に兵が待ち受けているかも……と思わせるような作りになっているため、攻める方のメンタルも順調に削いでいくのです。
嫌らし~いですよね……だけどどっちも命がけですもんね……。
それが戦です。
天井が槍が降る「にの門」
ようやく「にの門」にたどり着いても、そこには重厚な鉄の門が立ちふさがります。
当然閉められているでしょうが、ここも工夫して何とか開けたとしましょう。
すると2階建てとなっている門の床板が外され、2階、つまり門を通る者に対しての天井から槍が雨あられと降ってくるのです。
出入口が狭い上に、天井までの距離が短く圧迫感があります。
さらに上から槍までざくざくと差し込まれるとあれば、それは恐怖でしょうね。
狭くて少人数でしか通れない「ほの門」
姫路城には攻められたときの時間稼ぎのために、わざと狭く作られた門はたくさんあります。
「にの門」を抜けてたどり着いた、「ほの門」もそうですね。
少人数しか通れないうえにすぐに階段があり、門の内側や上から1人ずつ狙い撃ちができます。
また、階段ごと土で埋め立ててしまえばそこからは侵入不可ともなるわけです。
存在に気付きにくい「水一門」
「ほの門」をくぐって進むと、すぐ右側の壁はコンクリートに匹敵すると言われるほど頑丈な「油壁」があります。
この油壁の後ろに、天守へと通じる「水一門」が隠されているのですね。
攻める方としては一気に進みたいので前ばかり見ており、壁の後ろの隠された門にはなかなか気づきにくいでしょう。
いきなり下り坂にして迷いを生む「水二門」
何とか死角になっていた「水一門」を見つけて進むとします。
その後には「水二門」と「水三門」が続くのですが、ここがゆるやか~な下り坂となっています。
あれ? 天守って山の上じゃないの?(;゚Д゚)
攻める側はそう思い、疲れ切った頭で一瞬混乱するはず。
間違いなく天守への近道なのですが、間違えたかと敵の躊躇を一瞬引き出すため、わざと下り坂にしてあります。
そのうえ門と門の間が狭く、止まらざるを得なくなっています。それを狙い撃ちするのです。
天守近くで石落としの攻撃
無事に「水四門」まで生き残っていたとしましょう。
ようやく天守に近づきましたが、ここからもまだまだ大変です。
建物に近づくと危険なのは、仕掛けがあるからですね。
水四門を超えたあとは、頭上にそびえる建物に細く開けられた穴から、石や熱湯が降り注ぐという攻撃をされます。
これが「石落とし」。
これがあるために、石垣をよじのぼることも難しくなります。
登っている間に石落しから熱湯や石、槍などが降ってくれば一巻の終わりです。
とどめの「水五門」と「水六門」
なんと、まだ門は続きます。
しかも水五門と水六門は、どちらも頑丈な鉄製の扉。
ここを開門しなければ天守は攻略できません。
本当にとどめのように立ちふさがっていますよ。
水五門と水六門を攻略し、初めて天守へ辿りきました!
だからといって油断してはいけません。
ここからは、人対人の戦いが始まるのです。
*姫路城は完璧な要塞
ここで紹介したのは、本当にメジャーな仕掛けのみです。
まだまだ細かいことはたくさんあるのですが、文字数と気力の問題でここまでにしておきますね。
天下泰平の江戸時代にできた城とは違い、戦国時代の1581年に羽柴秀吉によってその基礎が築かれたとされる姫路城は、ほんものの要塞。
姫路城においでのときには、ぜひ自分が攻め落とす側の立場になって、じっくりと見学てほしいと思います。
恐らく多くの方が、大手門辺りで挫けている…はずですから。
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*本日のおすすめの本「天守を巡れば歴史が見える」
お城について書いている好きな本、おすすめの本を1冊ずつ紹介していきます。
『天守を巡れば歴史が見える』2010年 著:外川淳 出版社:ソフトバンククリエイティブ株式会社
城好きや歴史のファンの視点に立った本が少ないなあ、と著者が考えたことで、企画ができた本だそうです。
専門的すぎず観光ガイドブックすぎない、かゆいところに手が届くような内容ですね。
ここで書いた城の防御についても書かれていますので、ぜひご一読ください。
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