大分県の中津城は、福沢諭吉の出身地・中津に、軍師・黒田勘兵衛が築城した城です。
西側に山国川、北側に周防灘を配した堅城中津城は、満潮になるとさながら海に浮かぶ城のように見えたと言われていますよ。
中津城は、「続日本100名城」(第191番)に選定されている平(水)城で、三大水城(※)の一つ。
別称は丸山城、人家(じんか)城、扇(せん)城、小犬丸(こいぬまる)城です。
私が初めて登城したのは、1999年11月12日のことでした。
▶黒田如水(官兵衛)についてはこちら。
豊臣秀吉は九州平定後の天正15年(1587)、鎌倉時代以来の領主・宇都宮氏にかえて黒田孝高(よしたか 通称勘兵衛 後の如水)に豊前(ぶぜん)国中津郡他16万石を与えました。
名築城家である勘兵衛は入国後、山国(中津)川河口の海を背後にひかえた三角州を選んで新しく築城を開始。
中津城は、勘兵衛が自分の城として初めて本格的な近世城郭として築城した城です。
しかし諸事情で中津城の普請はたびたび中断し、はなかなか進みませんでした。
結局中津城は未完成のまま、黒田氏は関ヶ原の戦いの功により筑前52万石で博多に移封となります。
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関ヶ原の戦い後、黒田氏に代わって細川忠興(ただおき)が丹後宮津から未完成の中津城に入城します。
39万石で入封した細川氏は、本城とする小倉城の築城と並行して中津城の大修築も始めます。
30年余りの細川氏の時代には22基の櫓を持つ大城郭に修築され、河原を造成して城下町も整えられます。
山国川の本流大家(おおや)川を改修して、城を守る大濠が完成したのもこの時代ですね。
縄張りは、本丸を中心として北に二の丸、南に三の丸があり、全体でほぼ直角三角形をしていたため扇形に例えて「扇城」とも呼ばれた梯郭式です。
近世城郭として中津城が完成すると、忠興は家督と小倉城を嫡男忠利(ただとし)に譲って中津城へ移り、中津城を隠居城とします。
寛永9年(1632)に細川忠利が肥後熊本54万石藩主として転封した後、中津城は小倉城の支城から中津藩の城として独立。
九州の外様大名の監視役として、徳川譜代大名の小笠原長次(ながつぐ)が播磨龍野から中津藩藩主として中津城に入城しました。
小笠原氏は五代続いて断絶しています。
享保2年(1717)に奥平昌成(おくだいら まさしげ)が丹後宮津から10万石で入封し、以後9代約150年間奥平氏の居城で、明治を迎えました。
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昭和39年(1964)に旧藩主の子孫である17代当主・奥平昌信(おくだいら まさのぶ)氏が中心となって、天守と二重櫓を建造。
天守は本丸北東の隅櫓台の石垣上に、そして二重櫓はその南側にあります。
天守と二重櫓 by:photo-ac
東京工業大学の藤岡通夫教授が設計し、外観は萩城天守をモデルにしたようです。
藤岡教授は小倉城や名古屋城などの天守外観の復興に携わった人ですね。
天守について有力な説は、黒田氏時代から奥平氏時代にいたるまで中津城に天守はなかったとするもの。
三重櫓が天守の代わりだったと考えられていますので、この天守は模擬天守です。
現在内部は奥平家歴史資料館となっています。
石垣からはみ出した一重目と二重目が同じ面積の大きな入母屋造りの上に、一重の入母屋造りを載せています。
そしてさらにその上に二重の櫓を載せていますね。
四重目まで古式な黒塗りの下見板張り、五重目が白漆喰のずっしりとした姿で、桃山時代の天守の姿を彷彿とさせます。
面白いことに、中津城天守などの建物の管理運営は株式会社千雅商事が行っているのですよ。
つまり中津城は、国内で唯一株式会社が保有・運営する城郭なのですね。
黒田如水が築いた石垣は、天正16年に築かれた現存の近世城郭の石垣としては九州最古の石垣です。
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城址には元藩主の奥平氏を祀る奥平神社と、黒田氏に暗殺された宇都宮鎮房を祀る城井神社が建立されています。
本丸に広がる中津公園には福沢諭吉の巨碑がどどーんとありますよ。
城下には国の史跡となっている福沢諭吉の旧居が残っていますし、武家屋敷や古い町家も良く保存されています。
福沢諭吉は、幕末の城主・奥平家の中級家臣の出身です。
明治を迎えての活躍は有名で、慶応義塾を創設したことは今更言うまでもないことですね。
中津城は山国川という天然の濠を持ち、満潮時には内濠に海水が入った水城でしたが、濠は埋め立てられ、今は薬研堀が残っているだけです。
そのほとりに平成26年(2014)NHKの大河ドラマ「軍師黒田勘兵衛」の制作決定に伴って、勘兵衛と正室光姫の座像が建てられていますよ。
中津城の公式ホームページを紹介します。
奥平家の歴史などもわかって面白いですよ。
中津城訪問前にはぜひのぞいてみてくださいね。
*中津城詳細
・アクセス:中津駅から徒歩で15分
・営業時間:9:00~17:00 夏季(5月~9月)は18:00まで
・休業日:休館日なし
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【参考文献】
平井 聖監修『城 8 九州 沖縄 火燃ゆる強者どもの城』(毎日新聞社 平成8年10月25日発行)、財団法人日本城郭協会監修『続日本100名城公式ガイドブック』(学研プラス 2018年5月7日第6刷発行)、『城と城下町 西の旅』(日本通信教育連盟)『城 其ノ三』及び『同 解説編』(日本通信教育連盟)、南條範夫監修『日本の城 名城探訪ガイド』(日本通信教育連盟)、全国城郭管理者協議会監修『復元イラストと古絵図で見る日本の名城』(碧水社 1995年4月18日発行)他
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