93回目になりました!
城下町の大野は「北国の小京都」と呼ばれるところですね。
その大野から、標高約249mの亀山(かめやま)の山頂にひときわ高くそびえる越前大野城天守の雄姿を見られます。
雲海に浮かぶ幻想的な姿から「天空の城」とも呼ばれていますよ。
別称は亀山城。
「続日本100名城」(第138番)に選定されています。
越前大野城へは1998年6月13日に初登城し、2022年9月5日に再攻城しました。
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越前大野城は、織田信長の家臣・金森長近(かなもり ながちか)によって北庄城(福井)の東方防備の要(かなめ)の城として築城されました。
天正4年(1576)のことです。
信長は一乗谷の朝倉義景(あさくら よしかげ)を滅ぼして、大野郡の三分の一を金森に、残りを原正茂(はら まさしげ)に与えて、北庄城の柴田勝家(かついえ)の与力としました。
金森は最初、朝倉氏の旧城・戌山城(いぬやまじょう)に入ります。
しかし、戌山城は山城で交通の便も悪く、領地を治めるには不便だったのですね。
そのため、大野盆地の西にある亀山に、新たに近世城郭の越前大野城を築いて入城します。
大野は、北陸・美濃の両街道を抑える要衝です。
金森は領内の経営にも才能を発揮。
城下を碁盤の目のように整然と区画した町割りを行い、城下町の整備にも尽力しました。
賤ケ岳の戦いの後の天正14年、金森は飛騨高山に移封となります。
その後、越前大野城の城主は次々と小刻みに入れ替わり、天和2年(1682)に譜代大名で大老の土井利勝(としかつ)の三男・利房(としふさ)が4万石で入城してようやく藩主が定着。
越前大野城は、土井氏の居城として8代190年間で明治を迎えます。
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越前大野城は亀山山頂に本丸(写真の左上)、東の麓に二段構えの二の丸、その下に三の丸、外郭を配した梯郭式の縄張りでした。
曲輪を取り囲むように二重の濠が廻らされています。
山頂の本丸は石垣に囲まれ、二重の天守と付属する小天守、天狗書院や、麻木櫓、武器櫓、焔硝蔵、城門などで堅固な守りとしました。
上の縄張り図は「越前大野城山幷廓内絵図」で、寛延2年(1749)に作成された大野城の絵図です。
とても分かりづらいのですが、左上の山上に本丸があり、真ん中に大天守、右側に小天守、南側に天狗ノ間の文字が見えます。
中央の建物の平面図は山麓の二の丸上の段にある御殿、その下の曲輪を三方から囲んで濠が配され、石垣上には二重の北櫓と南櫓。
真ん中に櫓門があり、橋を渡って三の丸に通じています。
その外側を石垣の築かれた三の丸などの曲輪が囲み、山裾を囲むように濠が廻らされていたのですね。
なお写真には写っていませんが、左下に大手門、右上に下大手門が置かれています。
非常に防御力の高い城郭です。
安永4年(1775)に城下で起きた大火災により、天守など多くの建物が焼失。
20年後の寛政6年(1794)か翌年に、天守が再建されました。
「御本丸御造営御用覚」という記録があり、それによるとこのとき再建された天守は、大広間と天狗之間という二つの二階建ての建物からなっていたようです。
大広間には14畳と12畳の畳敷きの座敷があり、床の間と違い棚も付いていたといいます。
明治の初めの絵図には山頂に「天守閣」とあり、二階建ての建物がⅬ字型に繋がって書かれているとのことです。
このように寛政時に再建された天守は本丸の石垣上に築かれ、「天守閣」と呼ばれているものの、望楼部がない低い二階建ての御殿のような外観であったらしいですね。
焼失前の天守も、いくつかの古絵図によると、天守は二階建てで檜皮葺か板葺の御殿のような外観の建物が三棟連結していたとのことです。
築城当時のものと考えられている野面積みの天守台は大きく三つに分かれていることから、築城当初から三棟の建物がのっていたのでしょう。
したがって、大野城の天守は創建の時から江戸時代を通じ、三棟連結かⅬ字型の違いはあっても、望楼部のつかない二階建ての低い御殿風の建物だったのですね。
初期望楼型天守の代表といわれる福井県の丸岡城天守や国宝の犬山城天守も、創建当初は望楼部がなく御殿風の建物であったと考えられています。
昭和43年(1968)に、野面積み天守台の石垣の上に鉄筋コンクリートで復興天守を建造しています。
古図や丸岡城、犬山城などの古い天守を参考にして、かつての大天守の姿を推定した初期望楼型の外観ですね。
旧士族の萩原貞(はぎはら てい)氏の寄付で実現したそうです。
大天守は、四方に大きな入母屋破風のある一重の建物の上に廻り縁を持つ望楼を載せ、大きな石落としを持った二重の小天守が天狗書院跡に連結式に造られています。
居館の上に物見(望楼部)が付いて出来たといわれる、天守建築の発生をうかがわせる形の天守の姿です。
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現在、城跡の本丸は県史跡で、主要部分は亀山公園です。
二の丸、三の丸は大野高校建設に伴ってほとんどの遺構は失われていますが、内濠跡の一部と外濠の一部がわずかに残っています。
二の丸跡に7代藩主・土井利忠(としただ)を祀る柳廼社(やなぎのやしろ)が建立され、二の丸は社の境内となっていますよ。
多額の借財で藩財政がひっ迫していた天保13年(1842)、利忠は内山七郎右衛門らを登用して財政改革に着手し、殖産興業や人材育成で成果をあげます。
特に面白いのは「大野屋」という藩直営の商店を開設したことです。
「大野屋」は藩の物産を売る店で、大名(藩)が商売をすることは非常の珍しいことでした。
しかし、大変繁盛したようで、函館や名古屋、大坂など全国に12店舗もあったと書かれています。
天守の中は、武具や藩主土井家の婚礼道具、天守復元時に出土した資料などが展示されています。
亀山の東麓に広がる、北国の小京都と呼ばれる大野城の城下町。
築城者の金森長近は、城下町建設の名手といわれています。
彼は京都をモデルに城下町を造り、碁盤目の道を整然と通し、また特に水の利用を重視して上下水路を張り廻らせました。
昔は通りの中央に湧水が通っていたらしいのですが、残念なことに現在は側溝になってしまっています。
美濃街道の一部である七間(しちけん)通りは、城下町の中央を東西に走り、城に続く大手道として栄えました。
江戸時代には呉服屋や酒屋などの店があり、定期市が開かれていたようですよ。
この七間朝市は400年以上の歴史を持つもの。
現在も受け継がれています。
石畳の道に季節の野菜や切り花の店が並び、名物となっていますね。
城下町の東側を中心に、コの字型で町を囲むようにある寺の数は27ケ寺。
城下町にはつきものの寺町ですが、大野城下には9つの宗派の寺が集められていて、全国でも珍しい寺町です。
これは城下を支配しやすいように各宗派の寺院を集めたものだといわれています。
きれいな湧水が滾々と湧き出ています。
大野市は名水百選の「御清水(おしょうず)」や平成の名水百選「本願清水(ほんがんしょうず)」などの湧水地が多くあり、昔から豊かな水に恵まれた町です。
軟水で口当たりの優しい地下水で、水温は一年を通じて約15℃と一定なのですね。
夏は冷たく、寒い北国の冬には温かく感じます。
【1泊2日の福井県4城址巡り】
2022年9月5日から1泊2日で福井県の4城址巡りを楽しみました。
青春18きっぷを使っての泊りがけの城址巡りは、十数年ぶりでした。
5日は、まず天空の城としても有名な越前大野城を探訪。
今回の記事の主役です。
1998年6月12日に初めて訪れてから24年ぶりの再訪です。
約400年の眠りから目覚めた一乗谷の城下町。
復元された町並みを散策し、城下町では珍しい上・下城戸もゆっくり見学しました。
近いうちに、「特別企画 一乗谷を歩く」と題して詳しく紹介するつもりです。
バスで福井駅前に戻り、駅前のビルにある「あみだそば福の井」で焼き鯖そばをいただきました!
そのあと福井城址へ。
広い水濠と高石垣で囲まれた本丸跡は現在福井県庁となっていますが、天守台などの遺構もあり、なかなか見ごたえのある城址です。
今回は、平成20年に復元された福井城御廊下橋を見るのが楽しみでした。
福井城に行ってみると、御廊下橋だけでなく山里口御門も復元されていました。
次の第96回で福井城を紹介いたします。
福井城址を探訪したあと、駅前近くにある北庄城址に行きました。
柴田神社が再建整備され、柴田勝家像、勝家とともに自刃した信長の妹で天下一の美人と誉れ高かったお市の方、そしてその子供の三姉妹像が建立されています。
柴田勝家像
小谷城主浅井長政との間に生まれた茶々、お初、お江(ごう)の三姉妹。
茶々は秀吉の側室淀殿となり、お初は京極高次の妻、お江は徳川二代将軍秀忠の御台所(みだいどころ=将軍の妻の呼称)となり、戦国から江戸時代の歴史に大きな影響を及ぼしました。
注:「by:photo-ac」のクレジットがない写真は筆者が撮影したものです。
越前大野城の公式サイトです。美しい風景が見られますよ!
*越前大野城詳細
・アクセス:①JR越美北線(九頭竜線)・越前大野駅から登り口まで徒歩15分/山麓の登り口からは徒歩約20分
②JR北陸本線/JR越美北線(九頭竜線)/えちぜん鉄道・福井駅から京福バス「ヴィオ行き」に乗り「大野六間」バス停下車、登り口まで徒歩7分
・営業時間:4月~9月は午前9時~午後5時/10月~11月は午前9時~午後4時
・休業日:12月1日~3月31日
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【参考文献】
平井 聖監修『3 甲信越・北陸 銀嶺を望む風雪の城』(毎日新聞社 平成9年3月10日発行)、財団法人日本城郭協会監修『続日本100名城公式ガイドブック』(学研プラス 2018年5月7日第6刷発行)、南條範夫監修『日本の城 名城探訪ガイド』(日本通信教育連盟)、『城と城下町 東の旅』(日本通信教育連盟)、『城 其ノ二』及び『城 解説編』(日本通信教育連盟)、西ヶ谷恭弘編著『国別 城郭・陣屋・要害・台場事典』(東京堂出版 2002年7月15日初版発行)、全国城郭管理者協議会監修『復元イラストと古絵図で見る日本の名城』(碧水社 1995年4月18日第1刷発行)、「天空の城 越前大野城」パンフレット、「結の故郷 越前おおの 観光ガイドMAP」(大野市観光協会)他
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